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説明会

説明会

「生きものと地域を育む農業セミナー」
2011/2/21 Part1宮城会場 開催結果概略

 2011年2月21日(月)に芙蓉閣(宮城県大崎市)にて、「生きものと地域を育む農業セミナー(Part1 宮城会場)」を実施しました。当日は約30名の方が参加されました。
セミナーでは「事例発表・話題提供」および「パネルディスカッション」を実施しました。それぞれの概略は以下のとおりです。

事例発表・話題提供(1)

「農業を通じた食料生産と生物多様性保全 その現状と課題」
(株)アミタ持続可能経済研究所 主任研究員 本多清

・生きものマークをはじめとして、関連する取り組みに対する関心の高まりと推進策の整備が進みつつある状況である。
・取り組み事例を見てみると、畑作や果樹に比べると、水田で取り組みが先行している。取り組み規模は様々である。シンボリックな生きものを設定しているケースとあえて行わないケースの双方が存在している。また、高付加価値型の販売や環境教育との連携を行っているケースもみられる。
・農業者、自然(生物多様性)、消費者の3者が互いに関係を深めていくことが必要。また、地域の良さを活かす独自のストーリーを育み・分かち合う、という考えをもつことが重要。小さな失敗をおそれず、みんなで楽しみながら技術を高め、つながりをはぐくみ、取り組みを進展させていくべきである。

事例発表・話題提供(2)

「田尻田んぼの生きもの調査プロジェクト活動報告」
田尻田んぼの生きもの調査プロジェクト 阿部晃 氏

・この田んぼの生きもの調査プロジェクトは事務局が農協にあるということが特徴。
・みやぎ生協や東都生協、パルシステムなどの生協との取引を続けてきたが、その中で生きもの調査を交流事業に位置づけてきた。プロジェクトは、このような交流事業で農業用水路の調査を継続してきたことが基盤となっている。
・プロジェクトの理念を示すマークも作成している。田んぼだけでなく、地域の複合的な生態系を支えていき、私たちが目指す懐かしい未来を表したもの。基本的には二者認証をコンセプトとして今後も取り組みを進めていく。単にマークを貼って販売するのでなく、地域の思いや情報が伝わることを目指したい。

事例発表・話題提供の様子 「田んぼの生きもの宣言!」マーク付のお米
事例発表・話題提供の様子 「田んぼの生きもの宣言!」マーク付のお米

事例発表・話題提供(3)

「かしまだいシナイモツゴ郷の米(さとのまい)の取り組み」
かしまだいシナイモツゴ郷の米つくり手の会 会長 吉田千代志 氏

・かしまだいシナイモツゴ郷の米の生産地である鹿島台広長地域は、二級河川流域に開けた沢地で、農業用水はおおむねため池に頼っており、循環利用しながら使ってきた。シナイモツゴは、この地域のため池で約60年ぶりに再発見され、旧鹿島台町の天然記念物となった後、広域合併した大崎市でも市の天然記念物として引き継がれた。
・NPO法人シナイモツゴ郷の会の協力によって広長地区のため池にシナイモツゴを放流し、定着が確認できた。これがきっかけとなり、生息ため池の水を利用した圃場を中心として「シナイモツゴ郷の米」の生産を目指すようになった。
・シナイモツゴ郷の米では、さらに7つの約束として消費者に示すための基準を公表している。地域の自然、生活環境の向上を目指して魅力ある地域をつくり、「地域力」のある賑わいのある地域を取り戻していきたいと思っている。

事例発表・話題提供の様子 展示ブースの様子
事例発表・話題提供の様子 展示ブースの様子

事例発表・話題提供(4)

「農業を通じた食料生産と生物多様性の保全(水田だけじゃない 静岡県のこんな例)」
静岡県農林技術研究所 上席研究員 稲垣栄洋 氏

・静岡県では茶畑の周りに草原がある。これを地元では、「茶草場(ちゃぐさば)」という。ちょうど今くらいの時期に、茶草場の草を刈って干し、それをたい肥として畑に入れる。この作業によってお茶の味が改善され、いいお茶ができるというのが地元の認識である。この茶草場にはたくさんの植物が生えているが、このような植物の中には、全国的に絶滅が危惧されているものも多い。おいしいお茶を作る努力により、里山の生物多様性を保全しているということがいえる。昨今、注目が集まっている事例である。
・農業に多様性がある、ということが生物多様性につながる。いろんな地域でいろんな取り組みが行われていることが生物多様性につながる。地域のふるさとの農業をつないでいくことが、結局は生物多様性を守ることになるのだと考える。
・ このような取り組みは、だれでもどこでもできるものだと思う。素人だけで生きもの調査などを始めている事例もある。専門家がいないとしても、どきどき、わくわく感は味わうことができる。
・地域性を求めると、農業にたどり着く。地域の魅力に一番の関心があるのは、地域住民。生きものブランドの取り組みを進めるには、やはり地域住民の力が重要。

事例発表・話題提供の様子
事例発表・話題提供の様子

パネルディスカッション

[パネリスト(五十音順)]
・阿部晃 氏(田尻田んぼの生きもの調査プロジェクト(JAみどりの))
・稲垣栄洋 氏(静岡県農林技術研究所 上席研究員)
・佐々木陽悦 氏(田尻田んぼの生きもの調査プロジェクト 委員長)
・西澤誠弘 氏(大崎市 産業経済部 産業政策課長)
・本多清(アミタ持続可能経済研究所 主任研究員)
・吉田千代志 氏(かしまだいシナイモツゴ郷の米つくり手の会 会長)

[司会]
・大石卓史(アミタ持続可能経済研究所 上級研究員)

パネルディスカッションでは、会場参加者に記入してもらった「質問・コメントシート」を用いつつ、生きものと地域を育む農業に関連するトピックについて、意見交換が行われました。

[主な意見・発言]
・生きものに配慮し、箱施用材を使わず、殺菌剤だけで取り組んでいこうとしている。 その影響・効果については、宮城大学で調査中である。今年度はトンボのヤゴが非常に多かったことが生きもの調査の結果から判明している。
・生きものは環境や安全のものさしになるし、それを示すことは生産者が生産意欲を持つための一つの方法だと思っている。それを地域の消費者に理解してもらうのは、今後の課題。
・消費者にどうやって皆さんの思いを届けていくか。それにはいくつか方法があると思う。まず、百聞は一見に如かず、ということで現地に来て実際に見てもらう。また、お子さんを巻き込むと、同時に親も教育されるようになる。そして、流通業者やお米屋さんを巻き込む。そのときに大事なのは、その人たちが売るときにお客さんに説明しやすい物語や言葉を用意すること。また、ターゲットを絞って探すこと。このような農産物は、100人が100人欲しがるわけでなく、そのうち10人がしっかり評価してくれるものだと思う。その10人がどこにいるのかをしっかりと探していくことが必要。

パネルディスカッションの様子
パネルディスカッションの様子

生物多様性向上農業拡大事業に関するお問い合わせはアミタ持続可能経済研究所まで | 対応時間 : 平日 9:00-17:00, TEL : 075-255-4526 | メールでのお問い合わせ

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